アンダートーン/ホロウ・シカエルボク
 






たった独りの部屋でさよならと言い続けた
たった独りの部屋でそれを言い続けるには
たった独りであることを忘れなければならなかった
冷たい世界は骨を
機械のように冷やして
きいんという耳鳴りを絶えず響かせる
どこにも出て行くことのない
エコー


失った指先
失った指先が描こうとする希望は
やはりどこか失われていて
飲みほした珈琲の
最後の苦みが
その時喉で鈍い痛みを放つ
たった独りの部屋でさよならと言い続けた
答える声のないことは空虚であり至福だ


腰までの金網を乗り越えて
許されない草原を果てしなく駆けたあの日
幼い心が飲み込ん
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