帰郷/aria28thmoon
。
思いがけない贈り物に感激しながらもそれを手に一礼するのが精一杯だったわたしは、そのままアトリエを去り、それから一度も観月さんと顔を合わせることもなく、こうして東京まで来てしまったのでした。
あの日、彼の瞳に落ちた影の色を、片時も忘れることが出来ないままで……
――
――さて、ついつい長話をしてしまいました。気がつけばもう、あと一駅でわたしのふるさとに着いてしまうようです。
電車はゆるゆると速度を落とし、やがて片田舎の小さな無人駅のホームに停まりました。
わたしが大きな荷物とともに降り立ったそのホームには1年前と何ら変わりのない空気が流れており、その風が遠い都会から帰ったわた
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