帰郷/aria28thmoon
わたしにおかえりなさい、と語りかけているかのように思われました。
再び走り出した電車を見送って改札口に向かうと、そこには懐かしい人影がありました。
わたしは胸のおくがとくん、というのを感じながらも、そちらに駆け寄るようにしてただいま、という言葉を発しようとしました。
しかしまるで何かが詰まったように声が出せず、立ち止まってしまうのでした。
しばらくうつむいて顔を真っ赤にしていたわたしでしたが、ちらりと盗み見るようにしたその人の瞳が昔とおなじ透き通った光を放っていることに気がつくと、つかえていたものは一瞬にして崩れ去ってしまいました。
「ただいま……ただいま、お父さん、お母さん。
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