帰る(五月雨降られ)/AB(なかほど)
 

洗足池の水面に
信号のない横断歩道に
君が乗っている電車に
僕が立ち上がったホームに
雨が落ちて来るのを
君は電車の椅子に座って
足をぶらぶら
でんしゃ
でんしゃ
えほんのとおりに
ガタン ゴトン
おうたのとおりに
ガタン ゴトン
君を思い出すために
僕も足をぶらぶらさせてみる
もう少しで降ってきそうだから
もう少しぶらぶら

もう降らないのかもしれない
もう降っているのかもしれない



東京出張の際にはいつも
千鳥町の駅近くの旅館に素泊まりをする
「観月」という名前は
大観が仕事宿として長逗留した折に
部屋から見えた月を愛でたことに由来す
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