萩尾望都私論その1 まえあがき/佐々宝砂
 
女でもないが、成長すれば男にも女にもなりうる。フロルはメニールだ。知らないひとのために説明すれば、「フロルの選択」とは、自分の性別を自分で選択する、という意味。フロルは男に惚れたので、一応は女性になることに決める。

でも、フロルに選択の自由がなかったら?という話も萩尾望都は書いている。「X+Y」のタクトは、不安定な性転換剤の影響を受けて生まれたので、明日の自分の性別がどっちに転ぶかさえわからない。しかもタクトは、感情の表現が普通でない一角獣種という先祖帰りの変わり種だ。タクトには性別選択の余地がない。やじろべえのようにあっち向きこっち向き、そんなタクトがどうしたら特定の誰かと愛を語れる? 萩
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