最近読んだ本いろいろ/ふるる
 


著者が繰り返し繰り返し言うのは、ツェランの詩はユダヤの文化という背景があり、同時にそれは民族の負った傷であり、理不尽な死を強いられた亡き同胞に捧げられているものである、ということ。引用は、死者との対話だということ。
あと、ツェランの詩が分かりにくく、明快さを避けるのは、アドルノがツェランについて言ったように「生命のないものの言葉は、あらゆる意味を失った死に対する究極の慰めとなる。」ということ。感情のこもらない言葉を使うこと、死者の代弁を生きているものの勝手にしないことが、ツェランの死者に対する想い、詩の姿勢だったってことでしょうか。

アドルノは「アウシュヴィッツの後に詩を書くこ
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