s字台ニュータウン/アラガイs
 
ていた。

「ポツン ポツン 」と間隔を開けて
絵日記に描いたような細い家が無表情に建ち並ぶ
ひとつだけ、軒先が突き出た煉瓦色の型枠の中
窓越しに並べられて見えるのは美味しそうなパンだ
眺めれていたらちょうどお腹が空いてきた
揚げドーナツと入り口にある自販機で缶コーヒーを買う
たしか店には顔のない主が居たと思う
時計が止まってみえた
ため息をつき、迷いながら下り坂を歩くのは実に滑稽で楽なもの
ここまで舗装された道路を降りて来るには理由がある
そこはまるで新興住宅地のような見覚えのない壁の静けさだった
交差点には信号機が備え付けられ、霞むひとの姿も車の数も
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