死期に近づく夜/ホロウ・シカエルボク
 

人の心の中にある思いは、どんな形をしているのだろう
紫陽花に似ている花が散歩道に咲いていた、あれはなんという花だろう、こんな季節に花弁を広げることは、あいつにとってどんな意味があるのだろう
明日にも凍てつき、強い風に砕かれて散らばるだけかもしれないのに
そんな死の中に繋がる命はあるのかね、その成り立ちを俺に耳打ちしてみてくれないか、せめてそこにユーモアのひとつでも見つけることは出来るかね
深夜を徘徊するパトロールカーが迂闊な誰かに静かに話しかけている、「左へ寄せて止めてください」と
コンサート・ホールの反響のような効果を夜の空気は知っている
持っているものをすべて失ったような気が
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