死期に近づく夜/ホロウ・シカエルボク
 
気がする時のある夜、それはいつか遠い日の記憶が、初めてのように鎌首をもたげるせいだろうか、誰だっていつだって初めての中を生きているはずなのだ
マウスによる遺伝子の実験のエピソードを思い出す、分かれ道の片方にだけ電流を流したセットの中を何度も歩かせると、何代目かで電流の流れる方へ歩いていくマウスはいなくなるという話
殺されたりねじ曲げられたりする為だけに、生まれ育てられるものたちがいる、それは注文すれば空輸などでやってくるのだ、遺伝子的に
むげに死ぬことを教え込まれてきたものたち
死期に近づく夜がある、死期に近づく夜がある、絞り出した鼻歌はかすれていた





ロックミュージックが部屋で反響している





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