鏡/……とある蛙
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玄関扉を開け左壁面 家で一番大きな鏡がある。
その鏡は 不可能な空間ではないが、出入りする者の体全体を映すだけでなく、家全体を裏返す。
鏡の中に空間があるのだが、その空間に誰かが住んでいる訳も無くこちらから映像として見える空間は見慣れたものだ。
一番大きな鏡の中の空間はそこだけしか無いはずなのだから、自分がその鏡面の前に立った時だけその空間を認識できる。しかもそこで始まりそこで終わる空間である。
その日帰宅した自分はその鏡面の前に立ってみた。
その日の鏡の奥行きは
普段、見慣れた玄関のこちら側の現実より、わずかに広い空間が向こう側に広がっている。そんな気がする。
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