没落/黒川排除 (oldsoup)
感じた。私は再び耳を塞いだ。
底部をたゆたう大地の鳴動に、私は聴覚さえ失われつつあるのではないかという錯覚に捕らわれ始めた。私を装っていたものが私から離れていく音が全身を通じてはっきり聞こえる又は聞かされている、そして母と慕うはずだった大地の呼びかけもその音に緩慢に着実に覆われつつある。剥離音は父だ。接触とともにそれは生じるのだ、生じるのだ。私は子供ではないという証明だ。私は誰からも産まれていないし、誰も産む必要がない。必要がない、必要もない、必要とされてない。孤独であるが故に私の呼吸は掠め取られる。確かに聴覚は少し低下したようだった。相変わらず友のぬくもりは聞こえない。
しばらくして私は
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