お伽話 / 夢のまた夢/beebee
を渡れば戻れない
心の中で誰かが呼んでいる気がするのに
静かな闇は白いもやでけぶってきた
おーい、森よ
静かな森よ
わたしの居場所はあるのか
呼び声がこだまで重なる
山肌を縫って流れる河は冷たく光っている
途中までは飛び石があって
思い切って飛べば向こう岸にも届きそうだ
つんざくような高い声が響いた
夜の鳥はヒトの気配に敏感だ
眠りを起こされ数羽が声を揃えた
長引く声が気持ちを静めた
その時突然に雲間が晴れたのか
山並みの一角に月が現れ
月明かりの輝きが空気を振動させた
流れに沿った道が開けて
遠くに湖が見えた
敵だ、敵がいるぞ
突然の叫び声
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