あの日のマリアへ 2011/たま
その日も
いつもの終電に乗って真夜中のアパートに帰った
駅前の商店街のくらい路地には数人のやせた娼婦がたっ
ていて、通りすがりの男たちに声をかけていた
おにいちゃん・・・。
どうしても初めての女とはセックスができなかったぼく
は、娼婦の顔も見ないで足早にまっすぐ歩いた
もちろん、そんなお金はなかったし、そのころは年上の
恋人がいて十分に満ち足りていた
せまいアパートには年中ふとんがしいてあった
いつものようにすこし酔っぱらった恋人が、ショーツ一
枚のつめたいからだにふとんをからめて、筒井康隆の文
庫本を読んでいた
ぼくもブリーフ一枚になってその横
[次のページ]
戻る 編 削 Point(30)