あの日のマリアへ 2011/たま
の横にもぐりこんだ
煙草に火をつけて仰向けに寝ころんで、いしいひさいち
の漫画を読んだ
しばらくは、ふたりがめくる頁のかすれた音だけが聴こ
えた
ねぇ、だれかとしたでしょう・・?
触れてもいない踊り子の匂いを嗅ぎつけたのだろうか
恋人はぼくの腹に顔をうずめてブリーフをひきずりおろ
すと、半立ちの根っこを口いっぱいにほおばって舌をか
らめた
いつも、見飽きることのないその横顔は
たしかにきれいだったけど
ひとみの奥にやきついた
あれは
もっと、きれいだった気がした
いくつもの夜をわたって
ひとひとりいない朝の盛り場を、昼下がりの月のような
顔ですり抜けて
踊り子はどこまで旅しただろうか
たとえ切なくても
痛みのない明日を祈り
スプーンいっぱいの希望を呑み干して
陽のあたる部屋に、たどり着いただろうか
このぼくに似た
キリストを産みおとすために
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