君の世界の風下で/nonya
 

マーマレードの空瓶に挿した
残り物のクレソンに
小さな蕾がついたと
わざわざ見せにくる君

これから何年経っても
君の世界に吹く風は
遊歩道のささやかな花を香らせ
名も知らぬ草を撫でるのだろう

僕の好きな猫っぽい記事を
几帳面に切り抜いて
コーヒーの湯気の傍らに
さりげなく置いていく君

これから何年経っても
君の世界に注ぐ光は
街路樹のにぎやかな葉を笑わせ
ありふれた窓をまどろませるのだろう

ときどき僕の中の
やじろべえが傾いている時
ときどき君の中の
ちょっと我儘で強情な子供が
癇癪を起こすけれど

ときどき僕の中の
かざぐるまが回
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