岩尾忍詩集『箱』小論/葉leaf
 
「お前」「あなた」や様々な物体となって遍在していく過程は、「私」という統御された身体が、一度人称を失い、統御から外れて根源的な無名のものとなり、それでありながら見えないところでさまざまに流動した後に、再び「私」の反省的意識によってとらえ返され、そのときに一定の他者性をまとい、二人称や三人称の位置に凝固するという過程である。

箱こそが重要なのだ
箱さえあれば
何かを入れることができる
あるいは何も入れずに

抱いていくことができる
(中略)
「箱ですね」とあなたが言って
「箱ですよ」と私が答える
(中略)
箱こそが重要なのだ 箱さえあれば
      (「箱」)

 
[次のページ]
戻る   Point(7)