岩尾忍詩集『箱』小論/葉leaf
 

 岩尾の身体は分裂して周囲に拡散していくだけではない。逆に、周囲から様々なものを集めて、それを身体の支配化に置こうとする、そういう運動も強く見られる。およそ認識しうるものは大概身体と何らかの関係を結んでいる。このベッドは身を横たえるもの。このテレビは眼球へと光を届けるもの。このジーパンは脚に履くもの。太陽ですら、身体によって熱を感じられる当のそのものである。このように、世界は身体によって意味づけられ、逆に身体も世界によって意味づけられているのである。身体と世界は、相互にその存在や運動の態様について影響を与えあい、互いに含み合っているのである。
 引用部において、「箱」はそもそも世界の側にあった
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