はるかなひかり/水町綜助
 
皮脂が光を受けて放つ
虹色の燐光
そんなことについて考えていた


いつかみた
現象でしかない光は
あるとき俺を救った
しかしそれはけして
太陽や神様がもたらすものではなく
誰かと誰かの間にあった
ひとつの些細な出来事で
それはどこか一点に収束していく類の光ではなく
ただそこに漠然とある光だった
強いて言えば
なにも照らさず
それで見えるものは
なにもなかった
むしろなにもかもを
ひかりの中に飛ばし
輪郭も
すべての事細かなディテールもかたちをなくし
真っ白な視界の中で
ただなにもかも無感動でいられるひかり
つまりこれは闇にちかい

涅槃っていう
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