泡/まーつん
 
先を争って水面(みなも)を目指す  たくさんの 泡
ほどけたネックレスから 飛び散った
真珠のように 輝きながら
晴れた冬空の 明るさで染まった
水の中を ころころと 駆けあがっていく

会員制の スポーツクラブ
高いガラス天井から 降り注ぐ
気だるい午後の 日差しを浴びる
プールの底で 仰向けになって
水の揺蕩いに 屈折する
陽光の世界を 見上げながら
その男は いつも 思うのだった

揺らめきながら 登っていく
僕の吐息を 孕んだ
銀の小さな 卵の群れ

彼らは 似ている
生の鎖から 解放された
人の 魂の姿に

もしも この命が
急な曲がり
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