十二月の童話/salco
 
鱗が乾き始めたら、水に滑り入って体を労わり
万が一、人間に見つかっても
岩肌の凹凸が歩を妨げてくれるので
その間に深みへ逃げられるという利点もあります。


人間と同じように、彼も悪天候が嫌いでした。
下の方は静かなのに、息継ぎのために浮上するにつれ
うねりに翻弄され、大変苦しい思いをするからでした。
それより尚ひどい海上の波浪と
鉛色の重たい空から叩きつける雨風を思うと
とても憂鬱になります。

そんな時は、岩蔭にじっと潜んでいる魚達が
殊さらに羨ましいのでした。
そして自分にもせめて
一人でいいから仲間がいたらなあと思うのです。

 そしたらこんなに退屈しな
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