田村隆一論??フィクションの危険/葉leaf
墜してしまったなどという問題は本当に生じているのかについて、詩が修辞的に思想を語り出した時代の代表的詩人である田村隆一を取り上げることで論じようと思う。田村はまさに、実感を語ろうとする動因と修辞的に語ろうとする動因との葛藤で揺れ動いた詩人だからである。なお、本稿を書くにあたって、フィクション論については清塚邦彦『フィクションの哲学』(勁草書房、2009年)を参考にした。
1.フィクションとは何か
一篇の詩が生れるためには、
われわれは殺さなければならない
多くのものを殺さなければならない
多くの愛するものを、射殺し、暗殺し、毒殺するのだ
(「四千の日と夜」)
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