ロマネスクの果て/済谷川蛍
 
80歳まで生きれるのだろうか? 結婚だって出来る気がしない。掌編を書こうとしたが言語中枢が機能せず書き出せなかった。『ロマネスクの果て』はどうなるのだろう…。簡単に死ぬはずがないと思っていた文芸仲間が死んで、自分ももしかしたら長くないという心配があった。つまり畢生の作品がこのまま未発表になるんじゃないかと。机に転がっていた、買ったはいいが全く使っていないペリカンの万年筆を指で遊ばせた。
 「人間は、内に溜まったものを発散させなきゃ、死んでしまう。惨たらしく死んでしまう。動物だってみんなそう。人間だけが妙なものを溜め込み、妙な世界で我慢している」
 その日3本目のタバコに火を点ける。禁煙を解い
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