ロマネスクの果て/済谷川蛍
た虚脱感に身を任せているようだった。少年は駅で電車を待っていたときから僕に不審な違和感を感じていた。ときどき少年は窓の反射を利用して僕を見た。そして何度目かの確認でどうやら予感が確信に変わったらしく、文庫本で隠すようにして顔をそらし、身体も反対側に向けた。幼い美貌に悲痛な陰がさし、目には反抗の光が射していた。僕は胸に疼痛を感じた。
電車が止まり、少年が走り去るように電車を降りた。電車の扉が閉まり、生温かい孤独に包まれる。ストローの先をハサミで切って花のようにし、そこから喜びに満ちた息がシャボン玉にくるまって空を飛んでゆくような、そんな懐かしい季節の中に彼らは生きている。僕は少年愛のせいで常に自
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