ロマネスクの果て/済谷川蛍
 
ず黙っていた。僕は大学の学生相談室ではとても話せないことを語った。
 「僕は独りで生きていくさだめの人間なんだよ。人間は人間から何かを得るために生きる存在だろ? 僕みたいのは長く生きるだけ損なんだよ」
 野村くんは顔色一つ変えない。
 「じゃぁ目標として何歳くらいまで生きたいってありますか?」
 僕は腕をギュッと組んでうーんと俯いた。
 「きっと、やりたいことがなくなったらかな」
 「じゃぁまだなんですね」
 僕は何だか妙に得心して笑った。
 「そうだね」
 野村くんと出逢ってからの3年間、記憶に残る会話をしたのはこれだけだった。僕は彼のことを友達とは呼べない。ときどき夢に
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