人は咲いている 虹色に/るるりら
こわれかけの 小舟 軋みながら 沼の中
ゴボという音を一緒にきいた 舟の中に水が入る
飛沫や悲鳴や怒号や驚愕
ふたりは 小舟から 飛び降りて
息をきらして ずぶずぶ沈む舟
を忘れるように 走って走って走った
そうしているうちに ふたりの影は 長くなる
死にかけたことが 楽しくてしかたない
死にかけたと本気で感じた瞬間から
弟の影が妙だった
人影が、血と汗と太陽と草の獣の影だった
なにか それまでとは 違うものだった
それは 感情が生み出すものではなく
いづれ科学的な表現も可能な事柄のような気もする
背面の影は 青みかがっており
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