谷川雁論??自己愛と自由/葉leaf
 


 「前衛と原点」というものはいくつもの対立項に変奏されながら、しかもそれらの対立項は、互いに触発し合い、別の次元へと発展したり、位置をひっくり返されたりする。谷川の詩の振幅は、彼のこのような強固な思想に基づいていた。対立項とそれをめぐるダイナミズムを、人的な次元、物理的な次元、文化的な次元、社会的な次元へと適用していくことで、詩の世界を拡張していく。谷川の詩の完成度の高さには、彼の思想の強固さが強く貢献している。引用部については、まずは「東京」と「ふるさと」の対立、次に「こわれやすいがらす」という抒情と「ゆくな」「創れ」という意志の対立、さらに「あさ」に対する感受能力と「東京へゆくな」と
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