谷川雁論??自己愛と自由/葉leaf
 
ものがどれだけ行われ、あるいは行われていないか、について、谷川雁を例にとることによって論じようと思う。谷川雁は、自己愛や自己神秘化の傾向が強かったように見える一方で、自由や主体性を重んじたようにも見える詩人であるからだ。

1.谷川雁の自己規定・他者規定

1.1.「原点」

「段々降りてゆく」よりほかないのだ。飛躍は主観的には生れない。下部へ、下部へ、根へ、根へ、花咲かぬ処へ、暗黒の満ちる所へ、そこに万有の母がある。存在の原点がある。初発のエネルギイがある。
      (「原点が存在する」)

 ここで言われている「原点」とは、社会的な運動へと人を突き動かすもろもろのものだ。
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