谷川雁論??自己愛と自由/葉leaf
だ。それは、個人的な次元では、情念や衝動、それらを組織する理性やイデオロギーや意志、それらがいまだ明確な形を取らないまま互いに浸透し合っている、その混沌を指すだろう。物理的な次元では、それは、何よりも民衆が生まれ育った土地、つまり、民衆がその起源の記憶から自己形成の記憶、社会化の記憶などを沈殿させ有機的に融合しているところのふるさとのことを指すだろう。社会的な次元では、それは、農村共同体、つまり、家族がいて愛しあう娘がいて、それらによって人を慰め安らがせる、そういう共同体のことを指すだろう。そして、「原点」とは「母」なのである。母とは人を産む人のことだ。人は母の胎内で母と一体となり、そこから「身分
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