谷川雁論??自己愛と自由/葉leaf
 
    (「商人」)

 さて、では谷川は本当にサルトルの立場から批判されるような態度を持っていたのだろうか。ここで「大地」とは「原点」に通じるものであり、「きのこ」「茶」「虹」は大地すなわち原点から生じる様々な思想・煽動ということになりそうだ。だが、谷川はここであくまで「売る」という立場をとっている。つまり、相手と対等の立場に立ち、自らも何かを犠牲にしながら、つまり相手から「麦」「共和国」を買い取りながら、自らの思想を相手に買わせているのである。ここでは、谷川が他者を一方的に支配し規定するという関係は成立していない。むしろここにあるのはサルトルの言う相克であろう。お互いに無差別で対等に取引し
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