谷川雁論??自己愛と自由/葉leaf
 
し、それによって生み出される芸術的感興を読み手と共有することで、読み手を自分の意図したとおりに動かそうとするのだ。
 谷川にとって戦争とは死に赴くことであった。だから彼はせめて「自分の死を自家製の言葉で飾りたい」と思った。このように、詩を書く動機の点においても、彼の自己愛は見てとれる。また、彼は散文において自らを「自我狂」と称している。だから、彼が自分の作品の完成度を高めたかったのは、まずは自らを美しく飾ろうとする自己愛に由来するのである。「美学に貫かれた谷川雁」という自己規定が彼には必要だった。そして、彼が詩において単に作品的完成度を高めることだけを目指したのではなく、その詩作の陶酔のなかに他
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