濡れた土地/長押 新
 
にお前のような若者が何を言いたいのだ。

KIBOU
実のところ、話したいことも聞きたいことも、私は持っていないのです。私は悲劇の中で産み落とされ、このように、農道で震えていました。すると、老いぼれ/死に損ない/ポンコツのあなたが現れて、あなたの視点から、再び悲しみを受けることになったのです。私は、あなたの話を聞くだけの耳を持っていながら、私の悲しみのほか何も知りませんでした。すると、この奪われた町には、たくさんの悲しみがあるわけですね。あなたは、私に顔が似ています。もはや、私はあなたの悲しみを聞かなければなりません。どうか、この町の酷い有様を、お聞かせ下さい。そうして、私の耳を満たしてくだ
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