殿岡秀秋小論/葉leaf
 
見捨てられる」関係が、人間にとっての現在のあり方である。
 だが、現在は単純に見捨て、見捨てられるわけではない。現在は常に人間に愛されている。だから人間は現在を拒絶するわけではない。現在とは人間にとって最も強度のあるものであり、人間にとっての唯一の実在である。現在とはそれほど価値のあるものであるから、人間はそれをその愛情の先端である認識によってとらえ、そしてそれを記憶の中に、愛情の海の上に、浮かび留まらせようとする。人間は過剰な現在から過去を選び取る。そして選び取られた過去を記憶の海に漂わせることで、自らのより強められた愛情の対象にするのである。
 人間は現在と必然的に出会う。だが人間は価値あ
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