殿岡秀秋小論/葉leaf
その存在すら忘却され、殿岡を戒める存在としての比喩するものである警吏の実在性ばかりが強められる。そうすると面白いことに、本来想像の産物でしかない比喩というものが、その実体性が限りなく強められることにより、非比喩に近づいてくるのである。
雪の翌朝
りんごの眼
バナナの鼻
炭の眉をした雪だるまを父が作った
(「月影の出口」)
この雪だるまの実体性と、先の警吏の実体性にそんなに差はあるだろうか。比喩とはそもそも二重写しである。実体性の強い比喩されるものに実体性の弱い比喩するものを重ね合わせるのである。ところが、殿岡は、比喩するものを克明に描いていくことで、つまり想像力を
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