殿岡秀秋小論/葉leaf
 
、そば屋で残り物を出されたのに怒らなかった自分を戒める自己意識を「警吏」で比喩している。警吏は自己意識の比喩でしかない。だからそもそも実体性は弱いはずなのだ。ところが、この詩では警吏がどんどん実体化されていく。

警吏は大きな十字路で
笛を吹きながら交通整理をする巡査の格好で
銀色の笛を持つ
(中略)
四角い空が
ひらけるとともに
眼に飛びこんでくる店の看板
とたんに警吏が現れて笛を鳴らす
(中略)
ガラスのドアを閉める
警吏は何か言いたそうである
ぼくは立ち去ろうとして振り返る
        (同編)

ここまでくると、もはや比喩されるものである自己意識などその
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