殿岡秀秋小論/葉leaf
反射する草花の目がいっせいにぼくを見る
(中略)
黄色い花の奥や
葉の中央の窪みに
その目はある
日光の下では閉じて月影に開く
(「草花の目」)
「あの人は植物のようだ」というとき、「植物」という比喩は実体を持たない。実体を持つのはあくまで比喩されている「あの人」であり、「植物」は単なる想像上の比較点としてしか意味を持たない。「あの人」の実体性は極めて強いが、「植物」の実体性は極めて弱い。だが、比喩の現場においては、比喩されるものと比喩するものの実体としての強度はさまざまである。「月光を反射する草花の目」というとき、その「目」は依然想像上のものだと思われる。つまり
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