殿岡秀秋小論/葉leaf
 
一部を温存することでそれを慈しみ続け、それを詩化し続ける。母に拒絶されたと感じながらも「もともとその空洞を埋めて/しなやかな胸になるために/きみといるのではないか」と語り、「きみ」によって母の欠落を埋めようとする。彼の苦悩は愛することと見捨てなければならないこととの葛藤だけに収束するものではない。彼の苦悩はもっと広がりを持っていて、その広がりの中には、過去を愛したり過去を修飾したり、それでも母への思慕をいつまでも持ち続けたり、母の欠落を「きみ」で補ったり、そういう一連の心的過程が含まれている。それら全部をひっくるめた豊饒な広がりが、殿岡の「苦悩」なのである。

2.比喩と実体

月光を反射
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