殿岡秀秋小論/葉leaf
なく、彼の詩の列にはただ水が流れ落ちるかのような自然なすがすがしさがある。能動的であると、抵抗を克服するときに必ず一種の屈折が起きる。一種のわだかまりが残る。そういうものが殿岡の詩には感じられないのである。そして、殿岡はその感覚が非常に柔らかい。殿岡の感覚には外界を遮断したり反射したり破壊したりする硬さがなく、むしろ外界と融和し混合し睦み合うのである。殿岡は、武装せず、受動的であり、柔らかい、そういう弱さを持っているが、この弱さこそが、彼の詩に自然と友愛と自由をもたらしているのである。本稿では、『日々の終りに』(書肆山田、2009年)を採り上げ、彼の弱さが詩の中でどんな様相を呈していたのかについて
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