一片の瓦礫/yamadahifumi
 
は)持たざる者に帰りたいとは思わないのだ。彼(彼女)は今や一つの運命である。他人からどう見えようと、彼(彼女)にとっては一つの人生なのだ。彼(彼女)は一つの生の権利を行使したのだ。他人からは幸福に見えようが、不幸に見えようが、それはもはや一つの人生、運命なのだ。

 現代は様々な観念が流れている。それによって我々は苦痛に対する恐怖を極度に高められている。そのために我々は人生に入ってゆけない。絶えず人生の夢を見ることは強制されているが、人生そのもの入ってゆくことは恐ろしく、ためらわれるため、みんなニの足を踏んでいる。みんな、ああなりたくはないと思う。そしてなにものにもなることができずに人生がーー
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