蛇音/よーすけ
 
開発の手は全く及んでいなかった。雑草が奔放に伸びきったただの草むらや個人が経営している農園などがいくつもあり、栗須にはここが「モンド」と同じ街には思えなかった。確かに近頃は人の数も増え、雰囲気も少し変わったような気もするが、それでも栗須の地区はマイペースにその規模を維持していた。
この街に高速道路が通る、というのが決定したのはおよそ十年前だった。それから採算の問題や複雑な地形からくる測量の難航など、紆余曲折を経てようやく半年前建設工事が着工され、人がほとんど住んでいない山のふもとの方に真っ白の橋げたが建てられた。栗須はその一種の現代芸術のオブジェのような橋げたを見ていると不安な思いに駆られた。あ
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