蛇音/よーすけ
 
。あれだけ大きいと街に落ちる影も大きい。
栗須は自分が今いる場所からその橋げたが見えるだろうかと思い、ふと目をやった。そして視界の端で人参畑の方に黒い塊のようなものを見た。ペダルを漕ぎながら注視していると、にわかにその塊が動くのが分かった。初めは農家のおばさんかと思ったが、それにしてはあまりに動きが機敏で挙動が不審だった。栗須はその黒い塊が自分の身体から現れたような気がして帰り道のルートを逸れて細い道に入った。
少しずつスピードを緩めゆっくりその影に近づく。栗須は自分で、馬鹿な事をしている、と思った。昼に見た映画に感化されすぎているのかもしれない。
影の輪郭がだんだんとはっきり見えてきた。農
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