蛇音/よーすけ
。農家のおばさんではない。背がかなり低い、恐らく栗須と同じくらいの年齢の男の子だった。元々が何色だったのかもはや判別がつかないくらい土と垢で汚れたシャツとズボンを着用し、肌はかなり色黒で、髪は短く測ったように切り揃えられていた。栗須は、野菜泥棒だ、と確信した。だがどうしたらいいのか分からなかった。栗須は自転車に跨ったまま、少年の行動が見える位置でじっと息を潜めていた。彼の知る限り、中学校にあんな奴はいない。同じ中学校の奴なら懲らしめるなり、教師に告げ口するなり出来る。だがその少年は全く未知の存在だった。まず身なりからしてまともな家庭の子ではない。
少年は持参していた麻袋のようなものに人参をありっ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)