蛇音/よーすけ
 
りったけ詰め込んでいる。工場のライン作業のように正確で無駄のない動きだった。常習犯かもしれない、と栗須は思った。
その時、栗須は少年と目が合った。少年は敵意のこもった視線を投げて黄ばんだ前歯をむき出しにした。言葉を知らない獣のようだった。栗須はその少年の牽制に体を釘づけにされたかのように動けなかった。彼らはしばらく十メートルほどの距離を挟んで睨みあった。
遠くで工場の終業を知らせるサイレンが鳴る。少年はそれを合図のように、麻袋を掴んで逃げ出した。何かを心底恐れるような走り方だった。栗須はしばらくその姿を目で追っていたが、突然思い出したようにペダルを漕ぎだした。
少年は裸足ながらも猫のように素
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