蛇音/よーすけ
 
せ、立ってペダルを漕いだ。
「モンド」の敷地から出ると道路開発によって片方二車線になった真新しい道路に出た。両側には野菜畑が広がり、ときどき腐った生ものの匂いがした。その向こうでは老婆が雑草を燃やしている。見るからに不穏そうな黒い煙が空に向かって立ち上り、まるで何かを必死に伝えようとしているようだった。だが道行く人は風に乗って流れてくる焦げた匂いを疎ましげに思うだけで煙には見向きもしない。栗須はその煙に鼻孔を塞がれ息を止められるような気がした。そして未だ街の開発に足掻くように広がる畑や空き地が全てアウトレットモールや家電量販店に変わる光景を想像した。
瑞嶋の方とは違って、栗須の家の方はまだ開発
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