蛇音/よーすけ
 

 坂を下りきると突然汗が吹き出し暑さを今さらのように感じた。頭も少し重くなり目も痛い。栗須はその夏のだるさを全身で受け止めながら山の方を振り返った。そしてさっきまで自分のいた場所に高速道路が通りトンネルが出来ることを想像した。蛇のようにうねるその道はどこまでも伸びていく。栗須はその後の街がどうなるか分からず不安な気持ちになって自転車を「モンド」に向かって漕ぎ始めた。
「モンド」に瑞嶋はいなかった。いつも自転車を置いている場所に彼の自転車はなく、他の駐輪場にもなかった。栗須が行かないと言っても、いつもなら瑞嶋一人でも「パトロール」には出かけてその暴君ぶりを発揮しているはずで、栗須は少し不審に思
[次のページ]
戻る   Point(1)