蛇音/よーすけ
に思った。
栗須はこのまま帰るのも億劫だと思い、半ば惰性のような気持ちを抱きながらゲームセンターの方に向かった。
夏休みだというのに客はほとんどおらず、ただ耳を塞がれるような雑多な音が何かをかき消そうとするように放たれているだけだった。その中で栗須は一人でしばらくゲームをしながら夕飯時まで何とか暇を潰そうとした。だが彼はプレイ中、誰かにずっと見られているような悪寒がしていた。合間に少し振り返ると、栗須より少し年上ぐらいの男四人が彼に向って挑発的な笑みを浮かべていた。自分はどんどん逃げ場のない崖に追い込まれていく、と思った。
栗須は結局相手にせず、三十分ほど一人でゲームを楽しんだ後何事もなく帰路に着いた。
次の日家にかかってきた電話で、瑞嶋が隣町の高校生と喧嘩をして鼻と頬の骨を折る怪我を負ったという知らせを聞いた。電話に出た母は、受話器を置くと栗須に尋問するような口調であれこれ訊いた。だが彼には、その母のややヒステリックな声よりもようやく始まった高速道路の建設工事の音の方が大きく聞こえるような気がして、窓の方に耳を澄ました。
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