蛇音/よーすけ
 
須は後ろを振り返った。長く伸びた竹がその家を守るように風に凪いだ。
「他の奴らはみんな出て行った」少年は尋問を受け、言いたくない事を言わされているように下を向き唇を噛んだ。「あいつらみんな卑怯者や」
「何があった」栗須が問いかけても少年は湿った土を見て何かを思い出しているようで何も答えなかった。栗須は少年に詰め寄り肩を掴んでもう一度強く「何があったんな!」と訊いた。少年は顔を上げ怯えたような目で栗須を見た。その目を見ると、栗須は少年が今まで抱いてきた敵意や憎悪といったものの一欠片が垣間見える気がした。それは決して特定のもの単体に向けられたものではなく、もっとあらゆる方向に対してのものだ。

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