蛇音/よーすけ
 
に訊いた。握った拳は血を止められたように少し痺れた。殴ってもないのに、少年の腹を全力で殴ったような感触が手全体を覆った。
――僕はこいつを街から追い出そうとしていたんだ。
少年は何も答えなかったが、栗須は竹に囲まれ湿気た空間に今さら気圧されるように手を離し退いた。少年の垢が張り付いた酸っぱい匂いが鼻に残った。
「お前に邪魔はさせへん」まだ威勢が残っているのか少年は強気に言った。
「ここに住んでるのはお前だけか」
「母さんと妹がおる」少年はまるで栗須が家族に何かしようとしているかのように睨んだ。
「本当か?」そう言った後、ふとその少年の家族が腐りかけた家から見ているような気がして、栗須は
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