蛇音/よーすけ
 
。道はそこで終わり、先はもう竹の生えた斜面が迫っている。栗須は亀井の写真から、もっと人が多く住む集落のようなものを想像していた。その山自体に何もかも飲み込まれてしまったかのような光景を見て彼は、さっきまで胸の中にあった正義感や使命感といったものが湿気に嬲られるような気がした。
「ここで何しとんねん」
 その声は夏の日差しから遮断されている場所に住んでいるとは思えないほど芯の太いものだった。栗須は思わず肩を震わせ後ろを振り向いた。少年は麻袋を手に立っていた。
「また盗んだのか」栗須は訊いた。少年はその問いに心底腹が立ったのか「悪いんか!」と大きく叫んだ。
「悪いに決まってる。街に住んでる奴が
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