蛇音/よーすけ
る季節だった。その山全体から発せられる鳴き声はさっきまで聞こえていた街の音を全て消し去り、栗須は思わず自分が登ってきた道と街を見下ろした。
疲れを訴える両足をそれでも必死に動かし、ようやく頂上に着いた。そして亀井が言っていた通りに道路から外れ、舗装されてない道に入った。竹の葉が空を埋め尽くし、辺りは夏を一切遮断されていた。光が当たらないせいか土が柔らかく腐ったような黒色をしていた。足音は綿を踏むようだった。栗須は自転車を停め、土の感触を確かめるようにゆっくり歩いた。水気を失った唇にひんやりとした風が当たる。
五分ほどして、日のほとんど当たらない場所で着実に腐食していったような一軒家が見えた。道
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