蛇音/よーすけ
強く、また暑さで全身の皮膚に乾いた汗が張り付いた。
少年はどこにもおらず、畑には気休め程度の動物避けが設置されているだけだった。だが栗須はそれを大したことではない、という風にまた自転車を漕ぎ始めた。毎日盗みに来るわけではないのかもしれないし、昨日のような栗須との接触を恐れているのかもしれない。朝より見るからに焼けた腕をさすりながら、街の車や人の音を耳障りだと栗須は初めて思った。少年にとってもそうかもしれない。
日差しを遮るようにして立つ橋げたの横を通り、山道の入り口に来た。風が強く、山に生えている竹が大きく揺れ葉が擦れ合う音が響く。栗須は自転車から降り、押しながら傾斜を登った。蝉が鳴き始める季
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